旧聞に属するが、令和4年10月に行われた中国共産党の党大会で、新しい最高指導部が選出された。別に、中国政治のウォッチャーではないから中国政府や中国共産党の人事に詳しいわけではない。しかし、習近平総書記、李克強首相が政治局常務委員に就任したころに発売された中国の権力システムに関する新書を読んでから、ライバル関係にあるこの両氏が中国政治をどのようにリードしていくのかと思って眺めていた。そして、今度の中国共産党の党大会の結果を見て、「へーえ」と思った。習氏と李氏が政治局常務委員になったのは15年ほど前。その時の序列は、不確かであるが1つであったと記憶している。その2人が、15年経過してみると、李氏は政治局常務委員に残らず、完全に引退。一方、習氏は、さらに、5年間、中国のトップを続けることになったということである。序列1つの差が、15年という年月の経過で、これほどの差になるという中国の権力システムのあり方で、今後、大丈夫なのであろうかという気がする。つまり、序列1つの差が、将来これほどの差になるということは、今後は、それを見越して、権力闘争が激しくなるだろう。そして、もう一つの問題は、中国でも敗者復活戦がなくなった、または、なくなりかけているということを示している。鄧小平氏は、毛沢東氏の時代に劉少奇氏の同類と見られ、失脚している。その時、周恩来首相が鄧小平氏を庇護し、復活させて副首相まで昇らせた。ところが、鄧小平氏は、周恩来首相の死後、失脚した。しかし、毛沢東氏が死亡して、当時の華国鋒首相が4人組を倒して権力を握ると、鄧小平氏の実力を知る人たちが推挙して、復活する。要は、この時点では敗者復活戦が機能していたといえるであろう。習氏が、総書記に就任してからの10年間で、どのようにして強大な権力を握り、李氏に差をつけたのか分からないが、敗者復活戦が機能しないということは、権力闘争の激化だけではなく、社会的階層の固定、社会的格差の固定につながる。そのようになれば、国力は衰退期に入る。今回の中国共産党大会は、はからずも、中国が興隆期・全盛期から衰退期に入ったことを示す大会になったのかもしれない。中国の王朝では長い王朝でも、建国後100年間が興隆期、全盛期。現在の中国共産党政権を過去の中国王朝と同じものととらえると、1949年が建国年だから2050年が建国後100年経過の年。ここから衰退期に入ることになる。現在の中国も、興隆期・全盛期の終わりが始まったのかもしれない。