旧聞に属するが、藤井聡太名人が、叡王のタイトルを失った時、○○○日天下というタイトルで、藤井聡太名人が叡王を失冠したことを書いた新聞があったようである。明智光秀の三日天下という言葉から連想するような、一種、藤井聡太名人のタイトル独占が終わったことを揶揄するような表現だったようである。将棋界では、その時点でのタイトル全てを独占した人はそう多くはない。升田幸三九段(正式な肩書きは第4代実力制名人ということのようであるが、これを書いている人間からすると、升田幸三九段の方が響きがいい。升田幸三九段の九段は、通常の九段ではないという気持ちがある。)、大山十五世名人、羽生九段、そして藤井名人の4人のはずである。将棋界の全てのタイトルを独占することが、将棋界の天下人というのであれば、天下を取ったことがあるのはこの4人しかいないことになる。昔といっても、大学生のころであるが、複数のタイトルのある将棋界で天下を取ったと言うためには名人を含む過半数のタイトルを取ることをいうのであると教わった記憶がある。それゆえ、中原十六世名人も中原時代と言われる時代を作り上げた天下人ということになると思っている。藤井名人が、8大タイトル全てを独占していたのは、ほぼ1年近かったのであり、揶揄されるような期間ではない。その後の藤井名人のタイトル防衛のすごさは誰も異論はないであろう。現在、藤井竜王対佐々木勇気八段の竜王戦7番勝負が始まっている。佐々木勇気八段は、藤井名人が四段か五段のころの作った連勝記録について、29連勝でストップさせた棋士である。そして、あまりマスコミでは言われないようであるが、佐々木勇気八段の師匠の石田和雄九段は、藤井名人の師匠の師匠である板谷進九段の弟弟子。つまり、広い意味では、藤井名人と佐々木勇気八段は同門である。本人同士には、そのような意識はないであろうが、兄弟弟子であった升田幸三九段と大山十五世名人の対決のように、後世に語り継がれるような勝負を見せて欲しいと思っている。