古物商が盗品を買い取った時

最近、東京のデパートで純金製の茶碗を盗み、盗んだ日に古物商に売却したという事件があり、当該古物商が180万円で買い取った物を400万円以上で売却しているという件について話題になっている。話題の内容としては、窃盗犯から純金製の茶碗を買い取った古物商が盗品であるということが分かっていたのではないかという点にあるようであるが、その中で、純金製の茶碗を買った古物商は、盗品であることを知らなければ、当該茶碗の所有権を取得するかのような記載をしている記事がある。しかし、これは、明らかな間違いである。おそらく、民法第192条の即時取得の適用があるということから、このような即断をしているものと思われるが、盗品・遺失物品については、民法第193条で、盗難に遭った時、紛失した時から2年間は無償で返還を求めることができるという規定が置かれている。この規定は、古物商にも適用されるから、窃盗犯から純金製茶碗を買い取った古物商は、本来ならば純金製茶碗を無償で返還しなければならない。しかし、この事案では、当該古物商は、他の古物商に当該純金製茶碗を売却していたようである。そこで、再販売の対象となった古物商は、盗難の被害者に返還義務があるかということになるが、民法第194条は、競売、公の市場、その物と同種の物を販売する商人から善意で買い受けた時でも、買い受けた人物は自らが支払った代価と同じ金額を窃盗の被害者が支払った時には当該物品を返還しなければならないとしている。そして、再販売の形で物品を購入した者が古物商の場合、古物営業法第20条は盗難・遺失の時から1年間以内は無償で返還に応じなければならないとしている。つまり、古物商の場合には、再販売の形で買い受けても、窃盗の被害者から支払った代金を受け取ることはできないということで、期間は民法よりも短くなっているが、責任は加重されているのである。考えてみれば当然であり、古物商は専門的営業を行うもとして、一般人よりも注意深く対応することが求められているのであり、一般人よりも責任が加重されて当然で、古物商に民法第193条の適用がないという理解は誤りなのである。では、本件の事案での古物商同士の関係はどうなるかと言えば、再販売で購入した古物商は、窃盗犯から純金製茶碗を買った古物商に売却代金の返還を求め、窃盗犯から純金製茶碗を買った古物商は窃盗犯に対し180万円の返還を求めるということになる。窃盗犯が売買代金を返還するだけの資力を持っていればいいが、持っていなければ、純金製茶碗を買った古物商は損失を被るということになる。尚、民法第193条、民法第194条、古物営業法第20条の適用対象となるのは盗品・遺失物であり、詐欺・横領によって第三者(古物商も含む)に売却されたものは、民法第192条の要件がそろえば即時取得されることになる。窃盗犯から純金製茶碗を買った古物商が盗品であることを知っていた場合には、刑法第256条2項の適用を受けることになる。蛇足であるが、古物営業第19条の盗品に関する品触れがなされ、その時点で古物商が当該盗品を所持していた場合、品触れの期間内に当該盗品を受け取った時には、警察に届け出る義務があり、これに違反した場合も刑事処罰の対象となる。